阿黒利則さんと松田賢一さんに建築業界のアレコレを教えていただきました

左から、阿黒利則さん(フォレスト㈱)、松田賢一さん(Arows㈱)、筆者

★★☆ ちょっと専門的(研究に関心のある方々へ)

阿黒利則さん、松田賢一さんと共に筆者作成
(2026年5月29日)
独立工務店と専門業者の世界

相互に独立した工務店と、さまざまな専門業者が、ネットワーク状の取引関係を作っている。工務店が「家を作る」というニーズをキャッチし、特定の機能に特化した専門業者に仕事を発注する。必ずしも工務店側の交渉力が強いわけではなく、ニッチトップの専門業者はかなりの価格交渉力を持つ。

工務店の社長も専門業者の社長も「一国一城の主」という感覚を強く持っている。優れた専門業者は、工務店にさまざまな提案をする。製造業の世界では「貸与図型/承認図型」という区分があるが、まさしく承認図型のような専門業者は優秀である。

義理・人情・プライドの世界である。

これは私の推測も混ざるが、さまざまな競争力学が働いている。工務店としては、優れた仕事をする専門業者に仕事を発注したいため、魅力的な専門業者をめぐって工務店が相互に競争する。専門業者としては、発展性のある工務店ややりがいのある仕事をさせてくれる工務店、金払いのよい工務店と一緒に仕事をしたいため、魅力的な工務店をめぐって専門業者が相互に競争する。取引を長く継続することによって得られる信頼も、競争の資源として有効に働く。信頼と「しがらみ」が絡み合うことで、この競争関係は複雑化する。

1980年代の京浜工業地帯の取引関係は、これに近いと思う。

材料メーカーと材料流通の世界

材料メーカーを頂点としたピラミッド構造。

少なく見積もっても4階層、現実的にはそれ以上の流通経路がある。材料メーカー、材料問屋(一次卸)、販売店(二次卸)、小さな販売店(三次卸)等々を経て、建材が工務店や専門業者に届く。購買側の交渉力によって、比較的上層から建材を買えることもあるし、下層からしか買えない場合もある。

専門業者は、とある建材が欲しいとき、材料メーカーに「どこから買えばいいですか?」と問い合わせるらしい。あの業者にはあの販売店から、という固定的なルートを、材料メーカーが業者に強いているケースが多い。

一物一価の法則も、ここでは通用しない。同じ品番の建材が、もちろん材料流通の階層ごとに異なる価格を持っているし、同じ階層だとしても価格が一致しているとは限らない。専門業者にしてみれば、いつも取引しているA販売店から購入するよりもB販売店のほうが安い、ということもある。しかし、そういう取引をB販売店に持ち掛けると、「いやいやあなたはA販売店のお客さんでしょ」と断られることが多い。たとえ仕入先の変更に成功しても、業界内で「あの会社は安ければなんでもいいらしい」という噂が広まって、長期的に見ればかえって高くつくこともある。

不思議な世界である。

一見すると、とても非効率的に見える。しかし、それなりの合理性もある。階層的に与信管理をしたり、上層に広報機能を担ってもらったり、固定的なサプライチェーンのなかでリスクマネジメントしたり。ただモノを流しているだけではない、とのこと。

ハウスメーカーと下請の世界

受注機能を持つハウスメーカーと、下請の工務店。

下請業者は、ハウスメーカーから言われたままに家を作る。独立工務店と取引関係にある専門業者は、工務店に仕様や機能の提案をすることもあるが、ハウスメーカーの下請業者はそのようなことはしない。また、発注価格は高いとは言えない。

この関係性は、まさしく藤田敬三が論じた「商業資本的支配」である。

阿黒氏いわく、「なんでそうなっちゃうのかなあ」。


また、当日はフォレスト㈱が主催する協力業者会にも参加させていただきました。イラン情勢に起因するナフサ不足で、エアコンカバーやパッキンが欠品になっていて、エアコンカバーはともかくパッキンがないと工事を進められない、販売店さんの在庫情報はあんまり信頼できない、メーカーは溜まった受注残の処理に忙しいのだろう、といった状況が報告されました。

こういった情報は、やはり現場の方々に教えていただかないと知り得ないものです。フォレスト社長の阿黒利則さん、フォレストの皆様、そして松田賢一さんをはじめとする協力業者の皆様、本当にありがとうございました。

みなさまへのお願い

「西大成の研究室」では、研究にご協力いただける方を募集しております。もし、インタビューや会社見学が可能でしたら、こちらのコンタクトフォームからメッセージを送信していただくか、もしくはFacebookでメッセージを送っていただけると助かります。どうぞよろしくお願いします。

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